立夏物語 【キセコン】
「うっせぇ、離せ、この変態!」

秀介は暴れるまことを、いとも簡単に抑えつけながら躊躇う事無くこう言った。


「まこと…俺と結婚しろ」


「馬鹿野郎、何が結婚…結婚?」


風が一陣吹き抜ける。その風は、夏の香りがした。


「ずっと思ってた、いつか必ず、まことに言おうって…」


まことは、言葉を失った。


はだけた浴衣の裾を気にする事も無く…思考も完全に停止して、頭の中で、ひよ子がラインダンスを踊っている光景が浮かんだ。


――何故なのかは分らない。

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