トキドキトキ


「何回も言うけど、愛子、男っていっぱいいるんだよ?
何もアイツだけが男ちゃうねんで?」


『いや、ほんまに頭では分かってます。』


そう、頭では分かってます。
昨日の夜珍しく電話した私の家にすぐ駆け付けてくれる優しい友達、

『矢木あすか!』

「な、なに?」

『……ほんまにごめん、ありがとう。』


頭を下げる私。
顔面が涙でグチャグチャで左腕にいっぱい傷がある私と一緒に泣いてくれた

優しい、あすか。
いや、あすか様。


「あんさ、今まで愛子に何ゆっても結局無駄やったから…もう辞めとき!って言わんけどな」

鼻筋の通った綺麗な顔を悲しそうにして口を開くあすか。


『うん。』

真っ暗な携帯の待受を一瞬チラっと見て、胸がざわざわもやもやしながら返事をする私。



「アイツ…翔太よりいい男(ひと)なんか…………ほんまにいっぱいおるから。うん、このセリフ何回ゆってんねやろな。

いや、でも、ほんまに。」



『うん。分かってる。』






分かってるよね。
ほんまに頭では。


しかし
気持ちがついていかん。

モヤモヤ、グチャグチャ。
< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop