プ リ ン ス
『着て』


女の子は戸惑いながらもパーカーを着た。




俺が着ていたのは男物だから大きいだろうが、その方が破れている服を隠せる。




下には黒のTシャツを着ているから大丈夫だ。




「ありがとう…ございます…。」


女の子は俺にお礼を言い、涙をポロポロと流した。




俺は女の子に近付き、涙を指で優しく拭った。




『ここは危ない。今度から近付かないようにしな。』


俺はそういうと、女の子に背を向け歩きだした。




「待ってください!!」




俺は立ち止まった。




「名前を…名前を教えてください!!」




名前か……。






『夏夜(カヤ)……。』


俺は咄嗟に思いついた名前を言った。
< 69 / 131 >

この作品をシェア

pagetop