透明人間になれる薬【BL】
僕は下を向いているから、
野宮がどんな顔をしてるかなんて解らない
けれど、彼の手が
薬の説明書を持っているのは見えた。
……ばれたか。
僕の頭にあった方の手は、
見えないはずなのに迷いなく頬に触れ
親指は涙を拭っていった。
どうしてそんなに、優しく触れるんだ。
嫌いなんだろう?
だったら、やめてくれ。
「ねえ、小吹」
「やめてくれ」
名前を呼ぶなよ。
だけど彼は勘違いしたのか、
手を離しただけだった。
そしてもう一度僕を呼ぶ。
「小吹」
「帰ってくれ!」
嫌いならそれでいいから。
無理に慰めようなんて思わなくていい。
虚しいだけだ。