龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
僕の、心の中での、盛大な突っ込みを知る訳もなく、志鶴は『シオン君』という男の話に頬を染める。

現実にそいつが存在していたら、志鶴の半径100メートルから駆除決定だ。

ちょっとした苛立ちを隠して、僕は志鶴から『シオン君』の話を聞き出した。

言葉の端々から、普段ほとんど自己主張をしない志鶴の好みや望みを慎重に読み取る。

話に夢中になる志鶴の腰に腕を回して、僕の膝の上に座るようにこっそり誘導するのは……まあ、ご愛敬だ。


「意外だな」

僕が呟くように言うと、志鶴は『何が?』と首を傾げた。

「志鶴は、そういう強引なタイプは苦手だと思っていたよ」

「苦手よ」

「じゃ、どうしてそんなに『シオン君』に入れ込んでいるの?」

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