龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
夜勤開けで現れたのは、遠縁の女医だった。


「やっぱり患者はお姫様だったか。あんな時間に電話してくるから、すぐ分かった」


彼女は頼もしいほどテキパキと志鶴を診察した。


「大丈夫よ。今年の型は特効薬がよく効くから。明日には熱も下がる。水分よく取らせてね――ま、この家じゃ看病する人には事欠かないだろうけど」


冗談じゃない

志鶴の看病は僕の仕事だ。


「圭吾さんに移ったらどうしよう」

志鶴が不安そうに言う。


「圭吾君なら、鬼より頑丈だから心配いらないわよ。ここ何年も風邪一つ引いてないし」


僕もその通りだと思った訳だが――

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