龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
第十六話 君は知らない
「圭吾さん」


仕事部屋の入口から、志鶴が顔だけ出して中を覗き込む。


「ん? どうした? 入っておいで」


僕の言葉に、弾むような足取りで部屋に入ってきた。

志鶴は帰ったばかりらしく、まだ制服姿だ。


「あのね……あの……」

志鶴は真っ赤になってうつむいた。

「やっぱり後でいいや」


女の子らしい気まぐれに、僕は微笑んだ。

他の女が言ったら、きっとイライラしたことだろう。

惚れた弱みとはこの事だ。


「そう言われると何だか気になるな」

「うん……」

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