龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
「志鶴、入るよ」

志鶴の部屋のドアをノックして声をかけた。

鍵はかかっていない。

まだ嫌われてないってことか。


いやそれどころか、僕を迎えたのはいつもの笑顔だ。

ああそうだった。

志鶴はめったな事ですねたりしない。

ただあきらめるだけだ。

それは人の言いなりになる弱さではなく、大切な人を守ろうとする強さゆえ。

志鶴は今までどれ程の事をあきらめてきたのだろう。

大事な父親に心配をかけないため。

父親が他人から批判されないようにするため。

そして今は僕の心を傷つけないため。


いじらしくて

胸が痛くなるほど愛おしくて

僕は志鶴を抱きしめる。


「やっぱり、友達と遊びに行っておいで」
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