melt away

ふと、隣の席に座っているカップルを見つめる。

楽しげに会話する2人は幸せそのもので

すごく羨ましかった。


「まあ、何も手掛かりがないし、探しようがないよね。残念だけど。」


きっと、夏樹が私の立場だったらそうやってスッパリ諦めてたね。

夏樹って強いし、サバサバしてるし。

私はダメだよ。

気持ちでは会えないんだから諦める、諦めるしかないって言い聞かせてるのに

毎日、窓から公園を無意識に見つめてる。

…また現れてくれるんじゃないかって…。


見ない、見ないって思ってるのに

体が、言うことを聞いてくれない。


「…夏樹、」

「ん?なに?」

「…ううん。それよりさ、七瀬さんとは上手く行ってるの?」

「当たり前だよー。昨日もデート行って来たんだ。」

「そうなんだ、意外とラブラブじゃん」

「あはは、まあね」


夏樹と会話しながらどこか私は違うところを見てた。

頭は公園の彼が占めてた。

最後に見た、あの彼を


改めて自分はおかしいって思った。

話したこともない、相手は自分の存在も知らない。

そんな相手のことばかり考えるなんて。


苦しくなる。


消えて欲しいのに消えてくれない。

頭にこびりついて離れてくれない。


ああ。

きっとこれを―――――――…
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