melt away
「もしもし?」
久しぶりにお母さんから電話がかかってきた。
去年の春に実家を出て一人暮らしを始めた私
そんな私を心配してお母さんは時々電話をかけてくる。
『愛理?元気にしてるの?連絡全くしてくれないから心配するじゃない』
「ごめんごめん。最近仕事忙しくて。連絡する暇がなかったの。」
『あら。そうなの?てっきり彼氏でも出来たんじゃないかと思ってたのに。』
「まさか。欲しいけどなかなかいい人に出逢わなくて」
『まあまだ20だしね。今はたっぷり遊ぶのもいいかもね。』
「うーん、うん。仕事落ち着いたらね。」
「あら。その時は一回くらい帰ってきなさいな。愛理の好きなハンバーグ用意しとくから」
「本当に?やったぁ。楽しみにしてる。じゃあまた連絡するね」
『うん。風邪ひかないようにね』
「はいはい。」
『じゃあまたね。』
お母さんとはすごく仲がいい。
姉もいるけど、一番連絡をとるのは私かもしれない。
パチンとケータイを閉じる。
「あ。」
そしていつものように外を見る。
…………まだいる。
夕方くらいからいて、もう真っ暗なのにまだいる。
公園の街頭が小さく彼を照らす。
今日は、結構長居してるなぁ。
なんて、カーテンを握りながら思った。
「………あ。」
バッとカーテンの影に隠れる。
一瞬、目があった気がした。
…いや。有り得ないでしょ。
そんな近い距離でもないのに。
…ソッとカーテンの隙間から片目を覗かせる