melt away


1秒間程見つめられたあと、消えそうな声で呟いた。


「………青木修也…。」



…修也、


無性に嬉しくなる。

知りたかった彼の一部が知れたことに。


もっと、もっとと欲張りになる。

見れるだけで幸せだったはずなのに、今は違う。

近くにいればいるほど、話せば話すほど、欲張りになる。


教えて、と心が言う。


「あの、」

「はい?」


ベッドから出た彼は、私が昨晩ハンガーにかけたスーツを羽織る。

…相変わらず、スーツが似合う。

高い身長に長い手足。

羨ましい程にモデル体型だ。


「おいくつですか?」


そう問えば、また消えそうな声で


「………28」


と呟いた。

…私の8つ上。


「仕事、何されてるんですか?」


カバンを持ってケータイをチェックする彼に再度問う。


その瞬間、

彼は小さく舌打ちをして私を睨んだ。


「…え…」


あまりに冷たい瞳に硬直してしまう。


さっきみた優しい笑顔とは正反対すぎて、声が出ない。
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