melt away
…やだ、


絶対泣きたくない。


鬱陶しいって思われちゃう。

うざいって思われちゃう。


めんどくさいって思われちゃう。



笑わなきゃ。


綺麗に終わりたい。


どうせ一回きりなら。


良い人だった、って、そんな印象で終わりたいもの。



「いえ、本当に結構です。もう公園で寝ないでしっかり家で寝てくださいね。」



笑ってた、はず。



「仕事、遅れるんじゃないですか?早く行かないと。」




相変わらず無表情な彼に、出来るだけの笑顔を


ああ、行ってほしいのに行ってほしくない。

まだ一緒にいて、もっと仲良くなりたかった。



「………そうですか。ありがとうございました。それでは」



せっかく手にしたチャンスを、守りたかったけど


彼が迷惑に思うなら、私はたった一時の夢でいい。


憧れの彼に近づけた。


素敵でしょう?


笑顔で送れたから。


静かに去っていく彼の背中を私はただ黙って見送った。


ガチャンと開いた玄関。


閉まらないで、どうか彼を通さないで



そんな私の願いは叶うはずもなく、しだいにドアは彼を通して閉じていく。



完全にドアが閉まった時には、私は床に座り込んだまま静かな空気の音をただ聞いていた
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