melt away
「で?」
「で?…って…。」
あの後ちゃんと仕事に行って、昼休みの時間に夏樹に今朝のことを話した。
私の目の前には相変わらずハンバーグがある。
「多分、もう、会えない、と思う」
口をすぼめながら夏樹につぶやく。
だってあまりに夏樹が呆れたように私を見るから。
そんな私に夏樹は大袈裟にため息をつく。
「ハアー…。」
「そんなため息…。」
私も若干傷ついたりする。
私なりに精一杯頑張った結果がこれなんだから。
「せっかくのチャンスを愛理は………。」
頭を抱える夏樹を見つつ私はハンバーグを口に運ぶ。
うん、美味しい。
「だって、怖かったんだもん。質問しただけなのにあんな冷たい目で睨まれて…。」
「………どんな目だったかは知らないけど、そこで怖じ気づいた愛理の負け。」
「…う。」
夏樹はオムライスを食べるためのフォークを私に向けて語り出す。
こんな時の夏樹はちょっとめんどくさい。
分かってるのに相談してしまうのは、やっぱり夏樹の言葉は的確だから。
「気になるんなら図々しいくらい相手の中に入って行かなきゃ。まずは眼中に入らなきゃ何にも始まらないんだよ?」
「はい……」
「嫌われたくないばっかりで何もしないなら相手にとってはただの風景なの!最初は嫌われる勢いで自分の存在を知ってもらうの!」
「……嫌われたくないよ」
「ばか!何も思わないより嫌いの方がいいじゃない。あいつ嫌いって思ってる時間は自分の事頭に思い浮かべて考えてくれてるんだよ?」
「……うん。」
「脇役なんかで終わらせたくないでしょ?頑張らないと。」
一通り言い終えたのか、夏樹はオムライスを口に運ぶ。
小さく美味しい〜とつぶやく夏樹を見たあと、私もハンバーグを食べた。
「………てか、そんな事言ったってもう会えないけどね」
自分で呟いたにも関わらず、なんだかむなしくなった。
あれが最後、多分彼はもう私の前には現れない。