melt away









彼は現れない。


ついさっきの昼間まで、そう思ってたのに。




今、目の前に彼がいる。








―――――――――…


仕事が終わって家に帰った。

ちらっと時計を覗くとまだ6時半だった。

いい年の女が遊びにも行かずこんな時間に家にいるとは。

自嘲気味に笑いながらもベッドにダイブする。

ああ、癒される。


同僚の女の子はみんな合コンやらデートなんて会話してたけど私には一切必要ない。

行ったって楽しくないし、ずっと彼…………青木さんのことばかり考えてしまう。



…今思っても、綺麗な顔立ちだった。

…笑った顔は可愛かった。


もう、一度、会いたい。


"嫌われる勢いで"


夏樹の言葉が頭を巡る。


………次があれば、もう後悔はしないくらい、自分を出すのに。


…恋って恐ろしい。


自分を変えてしまう力がある。

苦しいも幸せも混ざったほろ苦い、微糖コーヒーみたいな


…………そんな気がする。




ピンポーン



ガバッと体を上げる。

ベッドから下りてインターホンを見る

誰だろ。珍しい…。


「はい…どちら様……………」












「昨日世話になった青木です。」
< 24 / 54 >

この作品をシェア

pagetop