melt away
彼は現れない。
ついさっきの昼間まで、そう思ってたのに。
今、目の前に彼がいる。
―――――――――…
仕事が終わって家に帰った。
ちらっと時計を覗くとまだ6時半だった。
いい年の女が遊びにも行かずこんな時間に家にいるとは。
自嘲気味に笑いながらもベッドにダイブする。
ああ、癒される。
同僚の女の子はみんな合コンやらデートなんて会話してたけど私には一切必要ない。
行ったって楽しくないし、ずっと彼…………青木さんのことばかり考えてしまう。
…今思っても、綺麗な顔立ちだった。
…笑った顔は可愛かった。
もう、一度、会いたい。
"嫌われる勢いで"
夏樹の言葉が頭を巡る。
………次があれば、もう後悔はしないくらい、自分を出すのに。
…恋って恐ろしい。
自分を変えてしまう力がある。
苦しいも幸せも混ざったほろ苦い、微糖コーヒーみたいな
…………そんな気がする。
ピンポーン
ガバッと体を上げる。
ベッドから下りてインターホンを見る
誰だろ。珍しい…。
「はい…どちら様……………」
「昨日世話になった青木です。」