melt away
another side
今日、
俺の彼女が死んだ。
『……ごめんね、修也だけ、残して』
そんな言葉を俺に残したまま、目を閉じた。
開かない目。
開かない口。
動かない体。
冷たい手。
全てがリアルで、
俺は有り得ないくらい冷静で。
漫画やドラマみたいに、泣き叫んだり、何度も名前を呼ぶ事はなかった。
………そうだ。
言うなれば、放心状態って。
「………優奈、」
小さく名前を呼んでも、いつもみたいに笑って返事はしてくれなかった。
病院のベッドの上に横たわる優奈はいつもと違ってただのストレートの髪の毛で
出掛ける時、俺を何十分も待たせたメイクもしてないし
俺に見せてきたネイルもしてない。
細身だった体も今じゃガリガリで。
…変わってないところは
俺が去年渡した婚約指輪が薬指にはめられていたことだけで。
看護師が事務的に機械を外していく。
俺はなんとなくそこにいたくなくて。
静かに病院を出た。