melt away












「おい、お前顔色悪いよ?」



仕事が終わって鞄に書類などを入れていた時、

同僚の葵から言われた。

結構仲が良くてよく連んでる


「ああ…。少し寝不足。」

「寝不足って…。」



優奈が死んで五日目。

葬式とか色々あったけど、簡単に会社は休めない。

それに葵も葬式に出てくれたから俺だけ休むなんて出来ない。


「飯は?食ってんの?」

「んー、うん。」

「嘘付け。明らか痩せた」

「本当に本当に。食べたよ」

「何を?」

「パン」

「いつ?」

「昨日。」

「……………もう夜だけど。」



落ち込むなんて出来ないし。


ほら、言ったじゃん。


感傷に浸るのは苦手だって。


だって女なんていっぱいいるだろ。


ほら、一昔前の自分に戻ればいい。


毎晩違う女連れて

呑んで遊んで眠って

朝起きたら隣には誰もいなくて


失うことがなかった。

失ったって傷つかなかった。
















「お一人ですか?」


ほら、

いつも通ってたバーに行けば誰かが話かけてくる。


「はい、君も?」

「ええ。隣いい?」

「もちろん。どうぞ」



埋めてくれよ。


優奈より綺麗じゃなくたって、別にいい。


ただ、一瞬だけでいいから。
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