【短編】ぼくはポチ
「足、拭くよ」


ママさんのその一言で

ぼくは右の前足から順番に上げていく。

その方がママさんが


「拭きやすい」


と喜んでくれるから。

4本の足を綺麗に拭いてくれる。

たまに忘れて

勝手にリビングに行くと怒られるんだよ。


ミキちゃんにも、ママさんにも。


ぼくを叱った後のミキちゃんは


「でも、愛してるよ」


と言ってギュってしてくれるんだ。



―ミキちゃん、まだ寝てるの?



いつもなら、そろそろ起きてくるはず。

もう起きないと仕事に遅れちゃうよ…。


ママさんも時計をチラチラと見ている。


「もう…」


そう言ってミキちゃんの部屋へ向かう。

ぼくは階段の下で待つ。

『おいで』って言われなかったから。


ミキちゃん、今日も笑ってくれる?




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