【短編】ぼくはポチ
―ねぇ、ママさん…その人知っている人?



ぼくは喋っているつもりなのに、

ママさんには


「くぅん」


と鳴いているようにしか聞こえないらしい。

ミキちゃんならわかってくれるのに…。


訪問者はママさんに


「どうぞ」


と言われ来客用のスリッパを履く。

どうやら家に上がり込むらしい。



―お前、なんだよ…何者だよ…



ママさんはぼくをなだめるように


「ポチ、うーって言わないの」


と言いながら背中を撫でてくれる。

訪問者はトントントンと階段を上がる。

足音はミキちゃんの部屋の前で止まる。


「ミキ?」


彼は『コンコン』とママさんが

ドアを叩くのと同じように叩いた後

ミキちゃんの名前を告げたんだ。




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