【短編】ぼくはポチ
ミキちゃんが玄関のドアを開ける前に

ぼくは玄関で待ち構える。

ドアを開けるミキちゃんは満面の笑みで


「ただいま」


と言ってぼくの頭を撫でる。



いつもと同じなら。



でも、

この日のミキちゃんは違った。

アーモンドみたいな形をした

ミキちゃんの瞳からは大きな涙が出ていた。


―ミキちゃん、どうしたの?


ミキちゃんは涙を拭って

自分の部屋へ行ってしまった。

ぼくはミキちゃんの泣き顔は嫌いだよ。

雨の日と同じくらい嫌い。


―ミキちゃん…ミキちゃん…


ぼくがそう言うと

ミキちゃんの部屋のドアが開いた。


「…ポチ」


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