夏の鈴
公民館を出て、俺はいつの間に家に帰っていた
お通夜の時間まではまだ時間があるし、家に居た方が気が紛れる
居間のテーブルは散らかったままで、俺はオレンジジュースを注いでそれを一気に飲んだ
家に帰った途端、ミーンミーンミーンと蝉の声がやたらと耳に残った
その原因は綺麗に手入れをされた庭
庭は日本庭園のような立派な庭で、作ってもらった池には鯉が泳いでいる
全部親父の趣味だ
『これからこの庭どうするんだろ…』
縁側から主人の居なくなった庭の行く末を独り言のように呟いた
チリン…チリンチリン…
返事を返してるかのように音が鳴る風鈴
チリン……チリン…
あまりまじまじと見る事がない風鈴に目を向けると、ある事に気付いた
夏になると毎年飾られるこの風鈴、それは小学校の時に俺が遠足で買ってきたものだった
確か小学2年の時、水族館に行った時にお土産で買ってきたイルカの模様がはいってる風鈴
毎年風鈴を飾っている事は知ってたけど、まさかあの時の風鈴だったなんて
チリン…チリン……
その音は何年経っても、色褪せてなく綺麗な音色だった