夏の鈴


俺は座っている親父の後ろに回り、そっと手を肩に置いた

親父の体は夏だからか少しだけ熱くて、こうやって親父に触れたのは久しぶりだった


『あつしがこんな事するなんて、これから雨でも降ったりしてね』

肩揉みをする俺を横目におふくろがクスリと笑った


『それはそれで涼しくなっていいかもな』

親父もそれに乗って、クスリと笑ってみせた


俺はその後も親父の肩を揉み続けた

小さい頃、良く親父におんぶしてもらったけど、その時の親父の背中は大きくてゴツゴツしていた

今、こうやって親父の背中を見ると随分小さくなったな…と感じる

少し丸くなった背中に熱くなった親父の体温

こうして触れて、感じる事が出来る現実に胸が苦しくなった


縁側でチリンチリンと鳴り続けている風鈴

“後悔するなよ”

そう言われているみたいだ


< 22 / 55 >

この作品をシェア

pagetop