夏の鈴
俺は座っている親父の後ろに回り、そっと手を肩に置いた
親父の体は夏だからか少しだけ熱くて、こうやって親父に触れたのは久しぶりだった
『あつしがこんな事するなんて、これから雨でも降ったりしてね』
肩揉みをする俺を横目におふくろがクスリと笑った
『それはそれで涼しくなっていいかもな』
親父もそれに乗って、クスリと笑ってみせた
俺はその後も親父の肩を揉み続けた
小さい頃、良く親父におんぶしてもらったけど、その時の親父の背中は大きくてゴツゴツしていた
今、こうやって親父の背中を見ると随分小さくなったな…と感じる
少し丸くなった背中に熱くなった親父の体温
こうして触れて、感じる事が出来る現実に胸が苦しくなった
縁側でチリンチリンと鳴り続けている風鈴
“後悔するなよ”
そう言われているみたいだ