夏の鈴
夏の日、二人
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ミーンミーンと蝉の目覚ましで俺は目を覚ました
部屋の中は蒸し暑くて、網戸になっている窓からは風ひとつ入ってこない
俺はタンクトップの襟をパタパタさせて、時計を見た
時間は10時30分、夏休みだから昼過ぎまで寝ていたいけど、この暑さじゃ二度寝する気になれない
俺は一階に降りて、すぐ台所に向かった
冷蔵庫から麦茶を取りだし、コップに注(そそ)ぐ
……と、その時居間の方から物音が聞こえた
おふくろは9時〜3時までパートに出ていて、今の時間は居ないはず
夏の間は縁側の戸が全開になってるから、まさか泥棒?と思い…そっと居間に近付いてみた
摺り足で歩いても昔ながらの廊下はギシッと音が鳴った
『あつし、起きたのか』
その足音に気付いた人物が俺に声をかける
それは…親父だった
親父は縁側の廊下に座り、お気に入りの庭を見ていた
『親父…なんで居るの?』
思わず出てしまった言葉
だって、親父も今の時間は仕事だし休みは決まって土、日
平日に家に居る事なんて絶対にない
縁側に置かれた麦茶を一口飲み、親父は言った
『父さんも夏休みだ』