夏の鈴



『ごめんね、あっちゃん。うちの人飲むといつもあんな風になっちゃうの』

絡まれ防止の為、居間から廊下に出た俺をすぐに千代子さんがなだめた


『あぁ、全然。叔父さん正月とかお盆はいつもあんな感じじゃん。けっこう見慣れてるよ』

俺はまだビールを飲み続けている叔父さんに目を向けて言った

千代子さんはそんな俺をまじまじと見てクスリと笑った

『お正月からまだ半年しか経ってないのに、あっちゃん随分大人っぽくなった気がする』


近所の人やたまに会った人には良くそんな事を言われるけど、親戚の人に言われるのは少し照れ臭かった


『あの人…相当ショックだったみたい。昨日の訃報を聞いてからお酒ばっかり。許してあげてね、あっちゃん』


確かに親父と叔父さんはこの歳になっても仲が良かった

住んでいる所は遠いけど、正月とお盆は必ずうちに来て親父と朝まで飲んでいた

俺は一人っ子だから兄弟がどんなものか知らないけど、親父は酒を飲むといつも“あつしに兄弟を作ってあげたかった”と言っていたらしい


直接聞いた事はないけど、そんな話を人づてに聞いた

兄弟が欲しいと思った事はないけど、50歳を過ぎても仲がいい親父達は羨ましいと思ってた


兄弟というよりは友達みたいだったから



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