夏の鈴
ジョギングを終えて、家に帰った俺はすぐにタンスの奥に置いてある貯金箱を取り出した
500円貯金箱と書かれたアルミの缶
その名の通りコツコツと500円を入れ続けていた貯金箱はいつの間にか、かなり重くなっていた
俺は貯金箱を床の上に置き、それを上下に振ってみた
ジャラジャラとお金とお金が擦れる音がして、こんなに貯まっていたなんて自分でもびっくりだ
台所から持ってきた缶切りで貯金箱のふたを丁寧に開けた
一度開けると二度と貯金箱の意味を成さない缶
ふたがパカリと開くと大量の500円がジャラジャラと出てきた
このお金は別に欲しい物があったから貯めていた訳じゃない
ただなんとなくへそくり感覚が始めた貯金
グローブがいくらするか分からないけど、多分買えると思う
まさかグローブを買うお金になるとは思わなかったけど、
今はへそくりをしていて本当に良かったと思ってる
だってまた1つ親父の夢を叶えてあげられるんだから
俺はその日の内にスポーツ用品店に行き、一番安いグローブを二個とボールを1つ買った
俺は野球少年でもサッカー少年でもなかったから、スポーツ用品店に行くのは初めてだった
グローブを買ったのも、グローブを手にはめたのも実は初めて
キャッチボールなんて出来ないかもしれないけど、それでもグローブを買った事に後悔なんてない
俺は買ったばかりのグローブをわざと土で汚した
新品で親父に渡したら、きっと気を使わせてしまう
汚しておけば友達に借りたと嘘が付けるし