夏の鈴


俺はとりあえずいつものように一階に下りて、麦茶で喉を潤した

すると居間の方からチリン…チリンと音が聞こえてきた

それは勿論、縁側に吊るしてある風鈴


今日は風があるから、鈴はいつも以上に揺れていた

チリン…チリン…チリン

縁側に立った俺はその音を聞きながら、外の庭を眺めていた

雨に打たれている庭の木々や花が妙に幻想的で…
俺は暫くその景色に見いっていた


『今日は雨だから走りにいけないな』

俺の背後で声が聞こえ、振り返ると親父が居た

親父はゆっくりと俺の横に立ち、家の屋根から伝う雨を覗きこんだ


『二度寝してもいいんだぞ。まだこんな時間だし』

腕組みしている親父は止みそうにない雨をただずっと見ていた


どうせベッドに横になっても寝れないし、余計色々考えてしまうだけだ


『親父こそまだ寝てれば?』

質問に質問で返すと、親父は居間に移動していつもの場所に座った


『父さんはいつでも早起きなんだよ』

親父はそう言って今日の新聞を広げた


この間にもチリン…チリンっと鳴り続けている風鈴

俺はその音を聞きながら、縁側を離れようとはしなかった



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