夏の鈴



こんなにまじまじと庭を見るのは久しぶりな気がする

毎日目に入ってるはずなのに、隅々まで見てみると新たな発見がある


例えば、鉢植えに植えてある花の色が統一されていたり

蔓(つる)が伸びる植物には棒を立てて蔓が巻き付くようにしてあったり

広い庭なのに雑な所なんて1つもない


『……ねぇ、親父はなんでこの庭をそんなに大事にしてるの?』


こんな質問をすると、親父は新聞に目を向けたまま言った


『この庭は親父が大切にしてたものだから』


親父が言う“親父”とは勿論おじいちゃんの事

おじいちゃんは俺が小さい頃死んでしまったから、遺影でしか顔を確認出来ない


俺はてっきり親父の趣味でやってるのかと思っていたのに…


『最初は嫌だったんだけど、無くしてしまうのは勿体ないだろ?
それに…この家もそうだけど、この庭は親父の財産だから』


おじいちゃんから親父へと受け継がれたこの庭

死んでも尚、ここにあり続ける庭はやっぱりお金には代えられないかけがえのない財産なんだと思った



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