夏の鈴



『あつしも朝ご飯食べる?』

掃除機をかけ終わったおふくろはひょっこり居間に顔を出した

今日が土曜日でおふくろの仕事が休みだと今さら気付く


『あぁ…食べる』

まだ寝坊したショックから立ち直れない俺は、気の抜けた返事をした


はぁ…とため息をついて、座布団の上に座った

『あつし今日はちゃんと食べとけよ。何せこの天気だからな』


親父はご飯を食べながら、庭を指さした

庭にはセミの声が復活していて、ジリジリと太陽が照らし続けていた


朝ご飯を食べ終わった後、俺はダサい麦わら帽子を無理矢理被らされた

理由は勿論、熱中症にならない為

まぁ、誰に見られる訳でもなく庭を手入れするだけだから別にいいけど


『あつし、ちょっとこっちに来い』


いつの間にか親父は庭に入っていて、中腰になりながら俺を手招きしている

『何?』

縁側から庭に出た俺は親父に近付いた

『ここに生えてる雑草を抜こう』


そう言われてしゃがんだ先は松の木が植えてある場所で、その回りには確かに草が生えていた



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