夏の鈴
俺は別に不良でも何でもない
普通に考えて、高校2年の夏休みに家に居る奴の方が普通じゃない
中学と違い、高校で出来た友達とはハメを外せるし、金はないけど外で騒いでるだけで楽しかった
家に帰っても寝るだけだし、“毎日遊んでないでちゃんと……”と毎回同じ説教をくらうから嫌だった
怒るのはいつもおふくろで、その点親父は何も言わない
だけど俺がキレておふくろに怒鳴り散らすと、親父は絶対にその倍俺を怒鳴った
俺が悪い事をすると親父はいつも“母さんに心配かけるな”と言う
おふくろと親父は結婚して20年経つのに、誰が見ても仲が良く俺はそれが嫌だった
昔は全然気にならなかったけど、思春期の今はそれを気持ち悪く感じていた
一人っ子は親離れ出来ないと聞くけど、俺は違った
親という鳥かごから早く出たくて、それが今だった
高校生になり、色んな友達と知り合い、女の子とも遊び初めて……
親父が死んだと知ったのは、本当に昨日の事
おふくろからの26回目の電話に出た時だった