誠ノ桜 -桜の下で-



――…



「そんな、過去が……」


全てを聞き終えた沖田は、溜め息混じりにそ
う呟いた。


「私は半人。だから、剣術も普通の女子と違っ
て発達しているのよ」


まぁ、気にしていないけどと続けて、凜は顔を
上げて沖田を見た。


「松平様をお守りすると決めたから……私は、
あの方の下へ帰る」


そして、瞳に悲しげな色を宿らせる。


「自分の想いが、他にあっても」


それが、私なりの恩返しだから。


そう言って立ち上がる。

沖田は、凜を後ろから抱き締めた。


「俺が、行くなって言っても?」

「………………うん」

「俺が…、好きだって言っても?」


凜は目を見開いて、思わず振り返った。

余りの近さに赤面したが、離れる隙も与えず
唇が重なった。


「凜、好きだよ」

「っ…、私は…」


グッと力を込めて沖田の胸を押した。



< 101 / 154 >

この作品をシェア

pagetop