誠ノ桜 -桜の下で-
――…
と、言う訳で。
やって来たのは、シンプルに『食事処』と書
かれた店だった。
それぞれに定食を頼むと、犬山が一番に口を
開いた。
「あぁー…隊長、やっと帰って来たんですね」
「どういう意味?」
しみじみと呟かれた言葉に、凜は首を傾げる。
「だって、凜がいないと詰まんないんですよ。
藩士の皆さんも活気がなかったと言うか…」
凜がいなかった時を思い出したのか、犬山は
寂しげな表情になった。
「まぁ諒がいてくれたので、少しは我慢出来ま
したけどね」
それに今は凜もいますし、とにこぱーと笑顔
な犬山は、間違いなく可愛い。
「あのさ暁君。俺を忘れてないかな?」
「…………か、薫もいなくて寂しかったよ!」
ね!と苦し紛れに氷上に同意を求める。
完全に、忘れていたのだろう。
「あぁ……まぁ。…いてもいなくても変わらな
いけどな」