誠ノ桜 -桜の下で-



犬山はやってしまったと言わんばかりの表情
で、宮部は隅っこでキノコの栽培を始める。

すごく、ジメジメしている。


「……鬱陶しいなぁ」

「まぁまぁまぁまぁまぁ姫!?」

「別に、事実だしいいんじゃねぇの」

「あわわわわ…」


…丸で漫才のようだ。

定食を運んで来た女子も、必死に笑いを堪え
ているではないか。


「あぁ、どうも済まないな」

「い、いえ!ではごゆっくり…」


松平だと分かったのか、女子は深々と頭を下
げて奥に入っていった。


「薫、冷めるよ」

「………うん…」


いつまでもいじいじしている宮部に、凜はイ
ライラを募らせた。


「松平様に奢ってもらっておいて食べないな
んて、いい度胸してるじゃない」


遂には胸倉を掴んでいる。


「わああああ、凜待って!食べる食べる!!」


死を悟ったのか、宮部は即座に立ち直って机
に向かった。



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