誠ノ桜 -桜の下で-
後ろでは、数秒遅れて四人が崩れ落ちる。
「…凜、俺の分は」
「ごめん、残ってない」
そう、と目を伏せ、氷上は予(アラカジ)め用意し
ておいた立て札を置いた。
『会津の名の下、辻斬りは粛正致した』
凜はそれを一瞥すると、直ぐに踵を返した。
――…
翌日は、京中辻斬り粛正事件の話で持ち切り
だった。
それも、町人が現場を目撃していたらしく、
凜と氷上は京の町を歩き辛くなった。
「桜姫様!桜姫様よ!!」
この上なく、騒がしい。
市中の見回りをしていると言うのに、こうも
騒がれては怪しい輩が逃げてしまう。
「凜ちゃん凜ちゃん!」
「あ…、お将(マサ)ちゃん」
そんな中で、親しげに声を掛けてくれたのは
甘味処の看板娘 お将だった。
「お団子どう?新作作ったんよ」
凜は笑顔になり、お将の店へ入った。