誠ノ桜 -桜の下で-



――殺してやる…





「―――っ…!!」


その日の夜中、凜は飛び起きた。

何かが這って来るような、底知れぬ恐怖を感
じたのだ。

しかもそれは、夢の中で感じたが今も感じて
いる。


何かが…何かが、来る。


凜は緋桜を持って、寝巻きのまま急いで松平
の部屋へ走った。


スパンッ!


「松平様っ!!」


息を切らして入ると、松平は無事だった。


「どうかしたのか?姫」


凜は一瞬の間呆気に取られたが、やはり怪し
い気配を感じて身構えた。


「松平様、何者かが侵入したようです」

「やはりそうか…良く来てくれたな」


松平も危険を察知して起きたらしい。

凜は松平を守るようにして立ち、姿を現さな
い敵を待った。


「――凜、下だ!!」


刹那、宮部の声が聞こえた。

しかし数秒遅かったのか、凜が構えるには時
間が足りなかった。



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