誠ノ桜 -桜の下で-
白刃が床を突き抜けて松平に当たると思われ
た瞬間、凜は咄嗟に松平を突き飛ばした。
ザシュッ……
「―――っ…!」
肉が斬れる音と同時に、血が吹き出る音が聞
こえた。
凜の左腕からは、夥(オビタダ)しい量の血が流
れ出している。
「………凜っ!?」
宮部が駆け寄ろうとしたが、凜がそれを制し
た。
「まだいる…っ、私はいいから松平様を…!」
深く斬られたらしく、血が止まる様子がない。
そして漸く騒ぎを聞き付け、藩士達が来た。
「隊長!?」
「っ…」
苦痛に顔を歪める凜は、それでも尚剣を握っ
た。
「駄目です凜!!」
「……暁…」
そんな凜を止めたのは、意外にも犬山だった。
実は犬山は、救護班の班長なのだ。
「それ以上無茶をすると言うのなら、僕が許し
ませんよ!!口利いてあげないです!」