誠ノ桜 -桜の下で-
「い………っ…」
「はい、終わりました」
救護室で、凜は犬山に手当てをしてもらって
いた。
「傷…深い、ですね…」
犬山は女である凜の体に傷が残るのが、どう
にも遣るせないらしい。
だが凜は笑った。
「私、傷の治り早いから大丈夫よ」
その笑みは、自嘲的にも見えた。
凜の言葉の語尾に付くのは何か、犬山は分か
ってしまった。
『人じゃないから』
――そう、続く言い方だ。
凜は自分で、『人じゃない』と言えば叱って
くれる人がいると分かっている。
だがどうしても、自分で自分が嫌なのだ。
「…例えそうであっても、ちゃんと療養して下
さい。これは救護班長からの忠告です」
「うん……寝てる」
元々睡眠の途中だった為、直ぐに眠気が襲っ
てきた。
「――は、―――…」
「―――…。やっぱり……」
「―には……だ、――な?」