誠ノ桜 -桜の下で-
はいと返事をした犬山の足音が聞こえてきた
ので、凜は耳を離した。
「凜、起きて下さい」
スッと襖が開かれて、犬山が呼び掛ける。
寝た振りをしていた凜は、目を開けて犬山を
見た。
「ご飯、食べられそうですか?」
「うん……大丈夫」
起き上がろうとする凜に、犬山は慌てて寝か
せ直す。
「まだ横になっていて下さい。直ぐに持ってき
ますから」
犬山も、松平の次ぐらいに心配性らしい。
凜は苦笑を浮かべて大人しく横になった。
犬山が部屋を出た後、凜はこっそり包帯を緩
めて傷を確認した。
治りが早いと言っても、流石に深過ぎたよう
でまだ半分も治っていない。
「入りますよ」
包帯を巻き直した直ぐ後に、犬山がお粥を持
って入ってきた。
「あ、自分で食べれます?」
「大丈夫よ、右利きだから」
ニコニコと犬山が見守る中、凜はお粥を食べ
進めていった。