誠ノ桜 -桜の下で-
「……ふふ」
もぐもぐと食べる凜に、笑みを零す犬山。
凜は首を傾げた。
「いや…、済みません。凜を看病した事なんて、
今までありませんでしたから」
何か不思議で、と眉を下げる犬山に釣られて、
凜もクスッと笑った。
「そうね、大きな怪我なんて初めてだし…」
そう言って最後の一口を頬張ると、凜はふぅ
と息を吐いた。
左腕を使わないものの、痛みがあるから疲れ
るのだ。
その後包帯を替え、凜はまた横になった。
ボーッと、眠る事なく夕日を見つめる。
……そろそろ、詰まらなくなってきた。
耐え切れず起き上がって、凜は部屋を出た。
「松平様」
「あぁ…入れ」
向かった先は松平の部屋。
凜は松平の上の空状態に違和感を感じた。
「…何か、事件でも?」
「な、事件など起こりはしないさ!」
鎌を掛けてみたが、どうやら本当に事件らし
いと確信する。