誠ノ桜 -桜の下で-



「土方」

「なん……は、水城?」


拷問室には、惨(ムゴ)い様子の古高と土方がい
た。

流石、鬼副長とでも言うべきか。


「まだ…、のようね」

「いや、直ぐだ」


数分後、その言葉通りに古高は全てを吐いた。


『風の強い日、京に火を放ち 騒ぎに上じてあ
わよくば天皇を誘拐する』

そして今夜、会合が行われるらしい。

会合は池田屋、四国屋のどちらかで行われる
可能性が高い。

それを狙って襲撃する。


土方は直ぐに皆に知らせた。

本命は四国屋だと踏んでいるようだ。


「水城、お前に言伝を頼む」

「分かった」


会津の援軍要請の言伝を受け取り、凜は直ぐ
身を翻す。

だがそれは、腕を捕まれた為に阻まれた。


「凜ちゃん」

「……………総司」


沖田が、感情の読めない笑顔を浮かべて凜を
引き止めたのだ。


「これ、あげる」

「…櫛(クシ)?」


そ、櫛。と笑う沖田を不思議そうに見て、凜は
口を開く。



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