誠ノ桜 -桜の下で-
「あり、がと」
「ん。もう暗いから、気をつけて戻ってね」
沖田が手を振る中、凜は走った。
だが途中で止まり、振り向く。
「……そっちも…気をつけて、ね」
凜の不安げな表情を見て、沖田は大丈夫だよ
と笑ってみせる。
凜はそれを確認して、今度こそ走り出した。
……傷が痛む。
少し、動き過ぎたようだ。
暗い道を、援軍要請の為に駆けていく。
丁度中間地点に来た時、怪しげな気配に気が
ついた。
数は―――――十五人……。
長州藩の輩だ。
知らない振りをして通り過ぎようとしたが、
目前に二人が立ち塞がった。
「おっと、ここは通さないぜ」
「藩邸に帰す訳にはいかねぇなぁ」
ぐるりと見回し、逃げ道はないと分かった。
凜は緋桜に手を伸ばす。
それと同時に、男達も刀に手を掛ける。
「一対十五。この状況でやり合うってか?」
けらけらと笑い出す奴等を鼻で笑い、凜は余
裕の笑みを浮かべた。