誠ノ桜 -桜の下で-
「凜っ!?」
藩邸へ辿り着くと、丁度宮部と出会した。
「凜、一体何が…!?とにかく手当てを…!!」
宮部は凜を見るなり、酷く驚いた。
何しろ、凜は血まみれなのだから。
「暁!!暁っ、凜が…!!」
「何ですか……え…凜…?」
宮部に呼ばれた犬山は信じられない様子だ。
「手当ては…いいから……っ、松平様に…」
凜はとにかく、一刻も早く松平に知らせたか
った。
この胸のざわめきを、早く取り除きたかった。
「何言ってるんですか!!そんな怪我で、勝手に
出て行った癖に!!」
しかし、犬山がそれを許さなかった。
いつも笑顔の犬山が瞳に涙を浮かべて言うも
のだから、凜も宮部も目を丸くした。
「…直ぐに手当てをしますから、松平様への用
件は後にして下さい」
「……分かった」
承諾した凜に笑顔を見せて、三人は救護室へ
向かった。