誠ノ桜 -桜の下で-
「酷い……。腕と足の手当ては、僕がしますね」
犬山は傷の深さや数を見て、苦しそうに表情
を歪めた。
「……何があったのか、話して下さい」
包帯を巻きながら、犬山が口を開いた。
宮部も床を見つめたまま耳を傾ける。
「新選組の屯所に行って、松平様に言伝を頼ま
れた。そして、それを知った長州の輩に襲われ
たのよ」
凜は冷静に、痛みに耐えながら話した。
宮部はそっと顔を上げ、凜を見据えて口を開
く。
「何人?」
「十五」
宮部は「そっか」と呟き凜に近づいた。
「本当……どんだけ心配したと思ってるの」
そう言って凜の頭を撫でる。
「……馬鹿凜」
「全くですよ」
馬鹿と言われた事にムッとした物の、それ以
上に胸が熱くなった。
「心配掛けて、ごめん」
凜が謝ると、二人は眉を下げて笑った。