誠ノ桜 -桜の下で-



「さ、出来ましたよ」

「ありがとう、暁」


腕と足の手当てを終えると、凜は直ぐに立ち
上がった。


「凜、無茶しないで下さい!」

「ごめん、それは聞けない」


振り返る事なく、凜はゆっくり歩く。


「……どうしてもと言うなら、手を貸します」

「俺も。何でも一人でしようとしないでよ」


二人に手を貸して貰いながら、凜は松平の部
屋へ向かった。







「失礼します」


中へ入ると、氷上がいた。


「……諒」

「馬鹿凜、おせーよ」


氷上は松平に凜が帰った事を伝えていたらし
く、凜を見ると安心した顔になった。


「ごめん」


凜は一言謝ると、松平に真剣な瞳を向ける。


「松平様。勝手に抜け出した事、申し訳ありま
せんでした」


開口一番に謝ると、凜は跪(ヒザマズ)いた。


「生きて帰って来て、何よりだよ。して、用件と
は何だ」



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