誠ノ桜 -桜の下で-
「新選組より、言伝を」
スッと顔を上げると、松平は先を急かすよう
に頷いた。
「桝屋喜右衛門こと古高俊太郎を捕縛、それに
より長州過激派浪士の計画を聞き出す事に成
功しました」
その言葉には、その場にいた全員が驚いた。
「ほう…それは?」
「風の強い日を狙って京に火を放ち、混乱に乗
じてあわよくば天子様を連れ去る」
「……無謀な…」
「最低です」
それぞれに眉をしかめ、凜の言葉を待った。
「今夜、その件についての会合が行われるよう
です。四国屋か、池田屋のどちらかで」
「…成る程。我々に援軍を頼みたいのだな?」
松平の問いに凜が頷く。
すると、松平は口角を上げた。
「勿論だとも。しかし、本命がどちらか分から
ねばなぁ…。戦力を分けては、負傷者が出やす
くなってしまう」
ううむと唸る松平に、凜はまた言葉を紡ぐ。