誠ノ桜 -桜の下で-
「………」
「あ…、ごめん」
無言の圧力で、沖田は部屋から出た。
それからやっと着替えると、何とか襖の前ま
で来た。
「総司」
そう呼ぶと、沖田は直ぐに襖を開ける。
「お願いがあるんだけど……」
「あ、ありがと……」
数分後、凜は顔を赤くして座り込んだ。
凜のお願いとは、歩けない自分を"あの場所"
に連れて行って欲しいという事だった。
それは肩を貸して欲しいという意味だったの
だが……。
土方を説得して外に出るや否や、沖田は凜を
お姫様抱っこして歩き出したのだ。
尋常じゃなく真っ赤になりながら、
一身に町人の視線を受けながら、
やっとの思いで辿り着いたのだ。
「……でも、有り得ない」
「ごめんごめん。その方が速いと思って」
頬を膨らます凜に謝るも、誠意はなさそうだ。