誠ノ桜 -桜の下で-



はら、と一片(ヒトヒラ)桜が舞い降りた。

それを手に取り、凜は口を開いた。


「この怪我は、私の大切なモノを守る為にした
怪我だから。だから、平気です」


そう言って綺麗に笑った凜。

桜は動きを止めた。


『……そう。凜はもう大丈夫ね』


夢の中は夢の中ね。

そう言うと、桜の花弁が凜を包んだ。

突然の事でただ見守る沖田と、光る凜。


『でも、治してあげるわ』


その言葉で花弁が凜から離れる。


「凜、一体……」


凜も駆け寄った沖田も、体を見て驚いた。


傷が………治っていたのだから。

包帯が解かれ露(アラ)わになった凜の肌。

跡形もなく、傷は消えていた。


「ありがとう、お母様」


不思議そうに桜を見つめていると、沖田にも
声が聞こえてきた。


――凜をよろしく、と。


それきり、凜にも桜の声が聞こえなくなった。




「……凜。体、本当に大丈夫?」

「うん、何ともない」



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