誠ノ桜 -桜の下で-
「君は、会津藩の…」
「会津藩松平公直属部隊隊長」
この長めの役名を噛まずに、間違わずに言う
というのは結構な至難の技だ。
「そうそれ。有名だよね」
「…そうね。あんたは壬生浪士組の人よね?」
凜は世間には疎い方だが、壬生浪士組の話は
度々耳にしていた。
「壬生浪士組副長助勤、一番組組長だよ」
「副長助勤…か」
凜は血が騒ぐのを感じた。
強い相手と戦う時の、楽しみや興奮だ。
「お手合わせ、願えるかしら」
「…喜んで」
相手も同じ気持ちらしく、凜の誘いをすんな
りと受け入れる。
そしてゆっくり刀を鞘から抜いた。
「変わった刀だね」
「緋桜よ。確か…妖刀」
そう、緋桜はよく斬れる刀。
その昔、緋桜を作った職人が斬れ味を確かめ
る為に、桜の木を斬った事から始まった。