誠ノ桜 -桜の下で-
「いやぁ、久しぶりの江戸だな」
「松平様、あまり燥(ハシャ)がないで下さい」
「凜、口悪いよ」
「わぁ、僕江戸って始めてですよ!」
「…お前も燥ぐな」
そんな会話を聞いて、呆れる江戸の人々。
だが仮にも松平の前、頭を下げている。
凜だけではなく、江戸行きの旅には他の
特攻隊の面子が揃っていたのだ。
「松平様、将軍殿に何のご用で?」
宮部が馬に乗っている松平に尋ねると、松平
は笑顔を浮かべた。
「それは言えん」
そしてゆっくり放った言葉を聞くと、宮部は
苦笑いをした。
「凜は江戸生まれだっけ?」
「そうよ」
犬山が嬉しそうに頬を緩ませながら訊く。
松平と初めて出会った時の事は、今でも鮮明
に覚えていた。
「暁は、どこだっけ」
「僕は京生まれですよ。あ、諒もですが」
そう言う割に京訛りではないなと思いつつ、
氷上に視線を向けた。