誠ノ桜 -桜の下で-
「隊長ー、眠い…」
ふぁ…、と氷上のように欠伸をしながら凜の
下に来た宮部に溜め息を吐いた。
「情けない、練習量増やすわよ」
「厳しっ!?暁にお願いするもん」
「…分かった分かった、私が行く」
凜も氷上と同じく犬山に弱い為、やむを得ず
緋桜を壁に立て掛けて竹刀を取った。
「噂は聞いてるが…強いのか?」
土方がポツリと呟くと、宮部が反応した。
「強いなんてもんじゃないよ、凜は」
まぁ見てな、と宮部は壁に凭(モタ)れた。
試合開始の合図と共に、凜は業と仕掛けた。
隙があると思った吉田が凜の攻撃を避けて、
背中に一本を取った。
――と、思われた刹那、吉田が尻餅を付く。
凜の竹刀は、吉田の喉元を捉えていた。
「い…一本」
審判の男も、何が起きたのか分からなかった
ようで戸惑っている。