誠ノ桜 -桜の下で-
「……速い」
斎藤が、皆の心の声を代弁した。
見ていても何をしたのか、まるで分からない。
「次は…あなたでいいですか?」
凜が息も乱さず紡ぐ。
視線の先には、道場主。
「…良かろう、お相手つかまつる」
そう来なくちゃ、と妖艶な笑みを浮かべる。
「……始めっ」
「下柳 哲郎(シモヤナギ テツロウ)、参る!」
始めの合図と共に、道場主の下柳が仕掛けた。
凜はそれを受け止めるが、重い。
何しろ下柳は大柄で筋肉質なのだ。
だが横に流すと、今度は凜が突っ込む。
下柳が受け止める寸前に身を屈め、そのまま
壁際に止まった。
下柳が素早く振り返って凜を見据えようと
するが、凜の姿は捉えられぬまま……
「一本!」
下柳は、負けた。
「…………」
呆気に取られる中、下柳は口角を上げた。
「くくく…はっはっはっは!!」