誠ノ桜 -桜の下で-
念の為に言っておくが、狂ったのではない。
「すばしっこい奴よ」
参った!!と笑う下柳。
先程の試合、凜は壁を蹴って回り込み、下柳の
背中を取っていたのだった。
「土方さんより強いんじゃないですか?」
あの子。と続けた沖田に、土方は苦笑いを返す
しかなかった。
確かに、負けるかもなと思ったのだ。
「会津藩士になると言うなら、もっと強くさせ
てあげるわ。……隊長の、私が」
「そういう事。どう?」
宮部がそう言うと同時に、道場中から入りた
いと言う声が上がった。
凜はニヤリと笑い、緋桜を腰に挿す。
「命のやり取りをする覚悟のある奴だけ、京の
会津藩邸に来なさい!」
雄叫びが上がると、凜は身を翻した。
「…あぁ、隊士募集なら他を当たって。失礼」
擦れ違いざま沖田達に呟くと、漆黒の髪を靡
かせて颯爽と去る。
…………宮部を置いて。
「ちょ…隊長〜!!」